後遺障害逸失利益の保険会社提示額が低い理由

示談案

後遺障害逸失利益(こういしょうがい いっしつりえき)とは、けがが治りきらず、後遺症によって十分に働けなくなり、稼ぎにくくなったお金のことです。

【金額の計算方法】
年収×後遺症によって稼ぎにくくなった割合×稼ぎくくなった期間のライプニッツ係数

*ライプニッツ係数とは、将来にわたって稼ぎにくくなったお金をすぐに請求することになるので、金利分を差し引くための計算です。

たとえば、主婦、30歳、ムチウチで後遺障害14級が通知された場合の金額は、

【弁護士基準(=過去の裁判例に基づく計算方法)】
381万9200円×5%×4.5797=87万4540円

【保険会社のよくある提示額】
261万円×5%×1.913524万9712円

このように、保険会社の提示する後遺障害逸失利益の金額が低い理由は、

弁護士基準では、

・女性の平均年収を使う(令和2年では381万9200円)

・ムチウチで14級の場合、稼ぎにくくなった期間を5年とし、ライプニッツ係数4.5797が使われることが多い

のに対し、

保険会社の計算では、

女性の平均年収より低い年収を使われることが多い

・稼ぎにくくなった期間を2年とし、ライプニッツ係数1.9135が使われることが多い

ためです。

なるほど!

「年収」や「稼ぎにくくなった期間」が違うから、保険会社の提示する金額は低いことが多いんですね!

ちょっと待って下さい!

保険会社から通知された後遺障害等級が間違っているということもあります。
等級が変われば、「稼ぎにくくなった割合」まで変わりますから、金額はもっと大きく違ってきます。

後遺障害等級ごとの「稼ぎにくくなった割合」は、次の表のとおりです。

労働能力喪失率表

さきほどの例で、14級が12級に変わった場合

【弁護士基準】
381万9200円×14%×8.5302=456万996円
・12級の「稼ぎにくくなった割合」は14%です(14級は5%)。
・ムチウチで12級の場合、稼ぎにくくなった期間を10年とし、ライプニッツ係数8.5302が使われることが多い。

保険会社の提示額24万9712円と比べると、431万1284円の差ということになります。

*この差は、後遺障害逸失利益のみのものです。さらに、後遺障害慰謝料にも差が出てきます。

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まとめ

後遺障害逸失利益の金額は、次の3つを使って計算します。

・年収
・稼ぎにくくなった割合
・稼ぎにくくなった期間

保険会社の計算では、この3つが低く見積もられていることが多いので、注意が必要です。

この記事を書いた人
深田茂人
深田法律事務所 代表・交通事故専門弁護士
深田 茂人(ふかだ しげと)
平成17年弁護士登録。平成19年に大分市城崎町に深田法律事務所開設。 これまでに1000件以上の交通事故相談、450件以上の依頼を担当しており、特に適正な後遺障害等級の認定が得られるよう注力しています。
【主な職歴・所属】
・大分県弁護士会副会長(平成26~27年度)
・大分県労働委員会会長(令和2年~現在)
・日弁連交通事故相談センター委員
・日本交通法学会会員
・日本賠償科学会会員

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