腱板(けんばん)とは、肩にある腱が上腕骨の頭を覆っている部分のことです。
腱板の断裂は、交通事故で、手を地面に強くついたり、肩を地面に直接打ち付けたり、肩を強くねじったりして起こります。
腱板が断裂すると、腱板によって腕を引き上げることが困難になり、断裂した腱板が肩峰(肩甲骨から出っ張っている骨)と挟まって衝突し、痛みを生じます。
腱板断裂のために、肩を動かすと肩の関節の外側から二の腕の外側にかけて痛む、安静にしていても痛い(夜に痛むことも多い)、腕を横に挙げたり脇を締めたりする途中の動作で痛むなどの後遺症が残った場合の後遺障害等級、賠償金額、後遺障害の立証方法について解説します。
40歳、会社員、年収480万円、
交通事故について被害者の過失なしの場合
等級 | 後遺障害 | 参考賠償金額 |
8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの | 5969万2320円 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 3958万6320円 =480万円(年収)×0.45(労働能力喪失率45%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 830万円 |
入通院慰謝料 | 335万円 (これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります) |
休業損害 | 800万円 |
入院雑費 | 45万6000円 =1500円×304日(10ヶ月) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
その他 | 参考保険金額が増額される可能性があります。 装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、将来の雑費、近親者の付添看護費、弁護士費用、遅延損害金など |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 4025万7792円 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 2375万1792円 =480万円(年収)×0.27(労働能力喪失率27%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 550万円 |
入通院慰謝料 | 335万円 (これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります) |
休業損害 | 720万円 |
入院雑費 | 45万6000円 =1500円×304日(10ヶ月) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
その他 | 参考保険金額が増額される可能性があります。 装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、近親者の付添看護費、弁護士費用、遅延損害金など |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 1770万744円 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 1231万5744円 =480万円(年収)×0.14(労働能力喪失率14%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 290万円 |
入通院慰謝料 | 164万円 |
休業損害 | 80万円 |
入院雑費 | 4万5000円 =1500円×30日(1ヶ月) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
その他 | 参考保険金額が増額される可能性があります。 装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、弁護士費用、遅延損害金など |
腱板断裂の後遺障害を立証する検査には、MRIや超音波検査があります。
ただし、完全断裂ではなく部分断裂の場合は立証が難しいことが多く、肩を専門とする医師と立証方法を打ち合わせする必要があります。
腱板断裂は、加齢によっても生じることがあるため、交通事故が原因のものかが争われることがよくあります。
その場合は、画像所見、事故から発症や診断までの期間、事故の態様、被害者の年齢、既往症などを考慮して判断されます。
単純X線画像で、骨棘などの加齢を原因とするものがないかによって立証することが考えられます。
この点が争われた裁判例としては、大阪地裁平成30年3月7日判決があります。
裁判所は、
・事故後の左肩関節MRI検査で棘上筋腱の関節側の部分断裂と大結節の小さな裂離骨折の所見があったこと
・被害者は事故の翌日に左肩痛、3日後には左肩が上がらないという症状を訴え、その後も継続して左肩の症状を訴えていたこと
・本件事故では車同士の衝突により、被害者の車は中破で自走不能となり、修理費も435万円と多額であったことから、身体に相当の衝撃があったと考えられること
・被害者は衝突した勢いで揺さぶられて反射的に左手をコンソールボックスに突き、左肩にずきっとした痛みがあり、その後も大きく揺さぶられた状態が続いたこと
などを理由として、事故によって左肩腱板を損傷したと認めました。
なお、既往症について、被害者が事故と比較的近接した時期に、左肩痛や左肩が上がらないといった症状を訴えて病院を受診し、医師に腱板損傷と申告していたことがあったのですが、その病院では左肩関節周囲炎であって腱板損傷と診断されていたわけではないこと、その時は1回の注射だけで症状が消失したことなどを理由に、肩腱板損傷が事故前からあったとすることはできないと判断しました。
そして、左肩関節の可動域角度は、屈曲が左135度、右180度、外転が左125度、右180度であり、右側の可動域角度又は参考可動域(180度)の4分の3以下に制限されていたことから、後遺障害12級6号を認定しました。
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