咀嚼の機能障害の後遺障害等級

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食べ物を噛みにくい、噛めなくなった後遺症が残った場合(咀嚼の機能障害)の後遺障害等級、賠償金額、後遺障害の立証方法について解説します。

食べ物が噛みにくい原因は、不正咬合(ふせいこうごう。正しいかみ合わせができないこと)や、側頭筋などの咀嚼に関与する筋肉(咀嚼関与筋群)の異常、あごの関節の障害、開口障害、歯の損傷などがあります。
交通事故によって頭部や顔面を強く打ちつけるなどして生じます。

食べ物が噛みにくいだけではなく、言葉も発しづらい場合は、後遺障害等級が重くなります。
言葉が発しづらい後遺障害とは、以下の4種の語音のうちいくつかを発音することができなくなったり、以下の綴音機能に障害があって言葉だけでは意思疎通できない状態をいいます。

*4種の語音
・口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音、わ行音、ふ)
・歯舌音(な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ)
・口蓋音(か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)
・喉頭音(は行音)

*綴音機能
綴音とは、2つ以上の単音が結合してできた音。
単音とは、言語音声を構成する最小単位。
(たとえば、「紙」は、[k][a][m][i]という4つの単音に分解できる。)

認定される可能性のある後遺障害等級

ご確認前に必ずお読みください
ここでは認定される可能性のある後遺障害等級をご確認頂き、1つのケース(被害者40歳、年収480万円、被害者の過失なし)を前提に、個別事情を考えない一般的な計算方法で計算した適正な賠償金額(参考賠償金額)をご覧頂けます。しかし、参考賠償金額は、年齢や年収をはじめ、具体的な事情によっては、金額が変わるものです。

参考賠償金額については、ぜひ、「内訳」までご参照ください。特に、具体的な事情によっては、内訳にある「その他」の賠償金も認められることにより、参考賠償金額よりも実際の賠償金額が大幅に多くなるケースもあります。

ご自身の場合の賠償金額がどうなのかについては、お気軽に無料相談をご利用ください。
参考賠償金額については、治療費が含まれていません(保険会社から直接病院に支払われることが多いため)。治療費を含めれば、その分だけ大きな金額となります。また、交通費も含まれていません。
併合によって、等級が上がっている場合は、その上がった等級の参考賠償金額と内訳を参考にして下さい。併合についてはコチラをご確認ください。

40歳、会社員、年収480万円、
交通事故について被害者の過失なしの場合

等級 後遺障害 参考賠償金額
1級2号 咀嚼及び言語の機能を廃したもの 1億2777万5600円

解説を見る

詳しい算出条件
流動食以外は摂取できず、かつ、4種の語音のうち3種以上の発音ができなくなった状態
参考賠償金額内訳
[入院  10ヶ月 / 通院期間  10ヶ月 / 休業日数  20ヶ月]の場合
後遺障害の逸失利益(後遺症) 8796万9600円
=480万円(年収)×1(労働能力喪失率100%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数)
後遺障害の慰謝料(後遺症) 2800万円
(*別に近親者の慰謝料も支払われる可能性があります)
入通院慰謝料 335万円
(これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります)
休業損害 800万円
入院雑費 45万6000円
=1500円×304日(10ヶ月)
治療費等 実費
(保険会社から直接病院に支払われることが多いです)
交通費 実費
その他 参考保険金額が増額される可能性があります。
装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、将来の雑費、近親者の慰謝料、近親者の付添看護費・自宅付添費、弁護士費用、遅延損害金など
注意:この内訳は、上記のケース(40歳、年収480万円等)を前提とした場合の一般的な基準による算出結果です。 具体的な事情によっては、金額が大きく異なりうるものです。

なお、後遺障害等級1級(後遺障害別等級表別表第2)の保険金額3,000万円というのは、最低限の補償である自賠責保険による保険金額の上限です。任意保険会社に対しては、この金額を超えた請求が可能です。
3級2号 咀嚼又は言語の機能を廃したもの 1億1967万5600円

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詳しい算出条件
流動食以外は摂取できない状態
参考賠償金額内訳
[入院  10ヶ月 / 通院期間  10ヶ月 / 休業日数  20ヶ月]の場合
後遺障害の逸失利益(後遺症) 8796万9600円
=480万円(年収)×1(労働能力喪失率100%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数)
後遺障害の慰謝料(後遺症) 1990万円
入通院慰謝料 335万円
(これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります)
休業損害 800万円
入院雑費 45万6000円
=1500円×304日(10ヶ月)
治療費等 実費
(保険会社から直接病院に支払われることが多いです)
交通費 実費
その他 参考保険金額が増額される可能性があります。
装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、将来の雑費、近親者の付添看護費・自宅付添費、弁護士費用、遅延損害金など
注意:この内訳は、上記のケース(40歳、年収480万円等)を前提とした場合の一般的な基準による算出結果です。 具体的な事情によっては、金額が大きく異なりうるものです。

なお、後遺障害等級3級の保険金額2,219万円というのは、最低限の補償である自賠責保険による保険金額の上限です。任意保険会社に対しては、この金額を超えた請求が可能です。
4級2号 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 1億943万8032円

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詳しい算出条件
(1)粥のような物以外は摂取できず、かつ、
(2)4種の語音のうち2種の発音ができない状態、または、綴音機能に障害があって言葉だけでは意思疎通できない状態
参考賠償金額内訳
[入院  10ヶ月 / 通院期間  10ヶ月 / 休業日数  20ヶ月]の場合
後遺障害の逸失利益(後遺症) 8093万2032円
=480万円(年収)×0.92(労働能力喪失率92%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数)
後遺障害の慰謝料(後遺症) 1670万円
入通院慰謝料 335万円
(これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります)
休業損害 800万円
入院雑費 45万6000円
=1500円×304日(10ヶ月)
治療費等 実費
(保険会社から直接病院に支払われることが多いです)
交通費 実費
その他 参考保険金額が増額される可能性があります。
装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、将来の雑費、近親者の付添看護費・自宅付添費、弁護士費用、遅延損害金など
注意:この内訳は、上記のケース(40歳、年収480万円等)を前提とした場合の一般的な基準による算出結果です。 具体的な事情によっては、金額が大きく異なりうるものです。

なお、後遺障害等級4級の保険金額1889万円というのは、最低限の補償である自賠責保険による保険金額の上限です。任意保険会社に対しては、この金額を超えた請求が可能です。
6級2号 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 8254万5632円

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詳しい算出条件
粥のような物以外は摂取できない状態
参考賠償金額内訳
[入院  10ヶ月 / 通院期間  10ヶ月 / 休業日数  20ヶ月]の場合
後遺障害の逸失利益(後遺症) 5893万9632円
=480万円(年収)×0.67(労働能力喪失率67%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数)
後遺障害の慰謝料(後遺症) 1180万円
入通院慰謝料 335万円
(これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります)
休業損害 800万円
入院雑費 45万6000円
=1500円×304日(10ヶ月)
治療費等 実費
(保険会社から直接病院に支払われることが多いです)
交通費 実費
その他 参考保険金額が増額される可能性があります。
装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、将来の雑費、近親者の付添看護費、弁護士費用、遅延損害金など
注意:この内訳は、上記のケース(40歳、年収480万円等)を前提とした場合の一般的な基準による算出結果です。 具体的な事情によっては、金額が大きく異なりうるものです。

なお、後遺障害等級6級の保険金額1296万円というのは、最低限の補償である自賠責保険による保険金額の上限です。任意保険会社に対しては、この金額を超えた請求が可能です。
9級6号 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 4949万5360円

解説を見る

詳しい算出条件
固形食物の中に咀嚼が十分にできないものがあり、かつ、4種の語音のうち1種の発音ができない状態
参考賠償金額内訳
[入院  10ヶ月 / 通院期間  10ヶ月 / 休業日数  20ヶ月]の場合
後遺障害の逸失利益(後遺症) 3078万9360円
=480万円(年収)×0.35(労働能力喪失率35%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数)
後遺障害の慰謝料(後遺症) 690万円
入通院慰謝料 335万円
(これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります)
休業損害 800万円
入院雑費 45万6000円
=1500円×304日(10ヶ月)
治療費等 実費
(保険会社から直接病院に支払われることが多いです)
交通費 実費
その他 参考保険金額が増額される可能性があります。
装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、近親者の付添看護費、弁護士費用、遅延損害金など
注意:この内訳は、上記のケース(40歳、年収480万円等)を前提とした場合の一般的な基準による算出結果です。 具体的な事情によっては、金額が大きく異なりうるものです。

なお、後遺障害等級9級の保険金額616万円というのは、最低限の補償である自賠責保険による保険金額の上限です。任意保険会社に対しては、この金額を超えた請求が可能です。
10級3号 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4025万7792円

解説を見る

詳しい算出条件
固形食物の中に咀嚼が十分にできないものがある状態。または、4種の語音のうち1種の発音ができない状態
参考賠償金額内訳
[入院  10ヶ月 / 通院期間  10ヶ月 / 休業日数  18ヶ月]の場合
後遺障害の逸失利益(後遺症) 2375万1792円
=480万円(年収)×0.27(労働能力喪失率27%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数)
後遺障害の慰謝料(後遺症) 550万円
入通院慰謝料 335万円
(これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります)
休業損害 720万円
入院雑費 45万6000円
=1500円×304日(10ヶ月)
治療費等 実費
(保険会社から直接病院に支払われることが多いです)
交通費 実費
その他 参考保険金額が増額される可能性があります。
装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、近親者の付添看護費、弁護士費用、遅延損害金など
注意:この内訳は、上記のケース(40歳、年収480万円等)を前提とした場合の一般的な基準による算出結果です。 具体的な事情によっては、金額が大きく異なりうるものです。

なお、後遺障害等級10級の保険金額461万円というのは、最低限の補償である自賠責保険による保険金額の上限です。任意保険会社に対しては、この金額を超えた請求が可能です。

後遺障害等級認定のための立証方法

レントゲン写真等の画像、そしゃく状況報告書、医師作成の後遺障害診断書など。

これらの立証方法が、矛盾なく整合している必要があります。

この点が争われた裁判例としては、東京地裁平成22年7月22日判決があります。

被害者は、そしゃく障害、開口障害について、「固形食物の中にそしゃくができないものがあること又はそしゃくが十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できる場合」であり、10級2号に該当すると主張しました。

また、たくあんやピーナッツが食べられないとする被害者の母作成のそしゃく状況報告表、医師が左顎関節突起部に偽関節や左顎関節突起部の短縮により咬合異常が生じている旨の説明をしたとの報告書、A医師作成の説明図を提出しました。

しかし、裁判所は、

・医師が作成した後遺障害診断書によれば、被害者の自覚症状として「硬いもの(ピーナッツ、タクアン等)が食べずらい」と記載されており、そしゃく状況報告表と内容が符合していないこと

・実際のレントゲン写真を見ても、偽関節については判然としないこと

を理由に、10級2号には該当せず、12級相当にとどまると判断しました。

この記事を書いた人
深田茂人
深田法律事務所 代表・交通事故専門弁護士
深田 茂人(ふかだ しげと)
平成17年弁護士登録。平成19年に大分市城崎町に深田法律事務所開設。 これまでに1000件以上の交通事故相談、450件以上の依頼を担当しており、特に適正な後遺障害等級の認定が得られるよう注力しています。
【主な職歴・所属】
・大分県弁護士会副会長(平成26~27年度)
・大分県労働委員会会長(令和2年~現在)
・日弁連交通事故相談センター委員
・日本交通法学会会員
・日本賠償科学会会員

 

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