額の傷あとが主婦業に影響することを保険会社に認めさせるなどし、提示額の719万円から1374万円に増額した事例

被害者:女性、60歳、専業主婦(大分県別府市在住)
事故現場:大分市
事故態様:自転車で交差点の自転車横断帯を渡っていたところ、対向する自動車が左折してきて衝突した。
入通院状況:治療期間217日(うち、入院日数23日、実通院日数17日)

ご相談内容

右手首を骨折しましたが、骨は癒合(=くっついていること)していると言われました。ただ、痛みが残っています。
また、額の左側に約5cmの線上の傷あとが残りました。

右手首の痛みが残っているとして後遺障害14級と、額に傷が残ったとして後遺障害9級が認められ、併合9級となったという通知が届きました。

その後、保険会社から「損害賠償金提示のご案内」が届き、719万7529円の示談金の提示がありました。

等級や金額は適正ですか?

来所相談での内容

後遺障害等級の認定が正しくなされていますか?

後遺障害等級の認定基準では、顔に5cm以上の人目につく程度以上の線状の傷あとがある場合には、後遺障害9級が認定されることになっています。

被害者様は、額に5cmの線状の傷あとがあり、後遺障害9級が認定されていますので、傷あとについては正しく後遺障害等級が認定されています。

また、被害者様の右手首の痛みが後遺障害14級とされている点についてですが、痛み(神経症状)の後遺障害等級には12級と14級があります。

12級か14級かは、主として、①痛みの程度と、②痛みを立証できる検査の結果が有るか無いか、で決められることになっています。

そこで、12級が認められないかについては、病院の医療記録を取り寄せて、検査結果を吟味する必要があることをお伝えしました。

なお、併合9級の「併合」の意味についてですが、後遺障害は13級以上のものが2つ以上あると、それらがまとめられて(=併合)、最終的な等級が上がるけれども、14級は併合されても等級が上がらないこととされています。

ですので、傷あとの9級と手首の痛みの14級がまとめられても併合9級で、等級は上がりません。しかし、手首の痛みが12級と認められた場合は、9級と12級がまとめられて等級は上がり、併合8級となります。

保険会社の賠償金の提示額719万7529円は適正ですか?

次に、保険会社からご相談者様に届いた「損害賠償金提示のご案内」の書類を確認したところ、内容は以下のようなものでした。

・治療費 433,000円
・入院雑費 25,300円
・交通費 48,200円
・診断書料その他 38,910円
・休業損害 444,600円
・入通院慰謝料 631,600円
・後遺障害 6,160,000円
・過失相殺 -81,081円
・既払い金(治療費等) -503,000円
・提示金額の合計 7,197,529円

仮に後遺障害の併合9級を前提としたとしても、上から順に、「入院雑費」、「休業損害」、「入通院慰謝料」、「後遺障害」、「過失相殺」が、被害者様にとって不利な金額となっていることをお伝えしました。

まず、「入院雑費」は1日1500円で計算すべきところ、1日1100円で計算されています。

「休業損害」は、入院中だけではなく、通院期間中の家事従事者(主婦)としての休業損害も計上されるべきです。

「入通院慰謝料」は、治療期間217日(うち、入院日数23日、実通院日数17日)の場合、弁護士基準では150万円程度が妥当なので、保険会社の提示は半分にも満たないものです。

「後遺障害」には、慰謝料(=後遺障害によって受ける精神的苦痛)と逸失利益(=後遺障害によって働きにくくなった損害)があります。
後遺障害の慰謝料は、裁判の基準では9級で690万円です。
逸失利益は、60歳の専業主婦の方が、額の5cmの傷あとによってどの程度働きにくくなると考えられるかが問題となりますが、いずれにしても後遺障害の慰謝料と逸失利益の合計で616万円の提示は低すぎます。

「過失相殺」として少しの金額が引かれていますが、それが妥当であるかについては実況見分調書などの刑事記録を取り寄せるなどして、事故態様を詳細に検討する必要があることをお伝えしました。

以上のようなご説明をさせていただきました。

ご依頼

以上のような相談内容を経て、深田法律事務所にご依頼されるかどうか、または、もう少しお考えになるかをお尋ねしたところ、被害者様は依頼をすると仰いました。

保険会社提示金額の719万7529円から「増額した金額の20%」を弁護士費用として後払いする内容の委任契約書を交わし、ご依頼を承りました。

*ご依頼者様は弁護士費用特約に加入されていませんでした(弁護士費用特約に加入されている方は弁護士費用の負担がありません)。

初動

後遺障害等級の検討

まず、診断書、診療報酬明細書、医療照会回答書(=病院が保険会社からの照会に回答した書面)などの医療記録を保険会社や病院から入手しました。

右橈骨の遠位端骨折(右の前腕の親指側の手首周辺の骨折)でしたが、レントゲンなどの画像上も骨の癒合(=くっつく)状態は良好でした。目立った神経の合併損傷もないとの診断でした。ただ、神経伝導速度検査などの神経症状を立証する検査までは行われていませんでした。

被害者様は、手首の痛みで後遺障害14級が認められています。しかし、これより上の12級が認定されるためには、神経学的検査により痛み(神経症状)の立証をする必要があります。

そこで、神経内科で神経伝導速度検査などの神経学的検査を受けるかについて、被害者様と打合せをしました。
被害者様のお話では、痛むけれども日常生活でそこまでの支障はなく、できるだけ早く解決してほしいとのことでした。

このような被害者様の意向を受け、手首の痛みについては14級の結果を受け入れることになりました。

そこで、額の傷あとの9級と手首の痛みの14級の併合9級を前提として、保険会社と交渉することになりました。

休業損害の検討

取り寄せた医療記録と照らし合わせながら、専業主婦である被害者様が、通院期間中に困難であった家事の状況を聴き取って文書にまとめました。

利き手である右の手首の痛みのために、アイロンかけ、風呂掃除、フライパンや包丁を使っての料理などが困難であったこと、自転車での移動ができなかったこと、額の傷あとのために外出を控えたことなどを具体的に記載しました。

そして、この文書を保険会社に送付しました。

過失相殺の検討

東京地方裁判所民事交通訴訟研究会の別冊判例タイムズ38によると、自転車横断帯を走行中の自転車と対向する左折自動車の過失割合は5:95です。さらに、自動車の方向指示器が遅れたり無かったりすると、0:100となります。

検察庁から実況見分調書などの刑事記録を取り寄せたところ、自動車の方向指示器が遅れている可能性がありました。

保険会社との交渉

入院雑費

1日1100円ではなく、1日1500円になりました。

休業損害

主婦としての家事が困難であった状況をまとめた文書を送付して交渉を続けた結果、約110万円増額の154万8080円になりました。

入通院慰謝料

取り寄せた医療記録をもとに、具体的な入通院状況を主張し、約80万円増額の145万333円になりました。

後遺障害

額の左側の5cmの線状の傷あと(後遺障害9級)と左手首の痛み(後遺障害14級)の併合9級を前提に交渉しました。

後遺障害の慰謝料は、併合9級の場合、弁護士基準は690万円です。交渉の結果、690万円の慰謝料については、保険会社も認めました。

問題は、後遺障害の逸失利益(=後遺障害によって働きにくくなった損害)でした。
保険会社は、「60歳の専業主婦が、額の左側の5cmの線状の傷あとが残ったとしても、家事労働に支障は無いのではないか」と主張しました。

確かにそのような裁判例もあります。しかし、逆に、「主婦という立場は、円満な対人関係の構築や円満な意思疎通の実現それ自体が職務上中核をなす職業とは異なるが、日々の家事労働を遂行する様々な場面でこれらが重要性を帯びることは少なくない」という考え方をとり、年齢や家族構成など具体的な事情を考慮して主婦の醜状障害(傷あと)の逸失利益を認めた裁判例も存在します。

裁判例や文献、本件の事情などを主張して交渉を続けた結果、保険会社からは後遺障害の逸失利益として379万1575円を支払う旨の回答を得ました。

この内容で示談するか、それとも裁判をするかを被害者様と検討したところ、被害者様は早期の解決を望まれました。

そこで、後遺障害としては、慰謝料690万円+逸失利益379万1575円=1069万1575円で示談することになりました。ご依頼前の保険会社の後遺障害の提示額が616万円でしたので、453万1575円増額したことになります。

過失相殺

保険会社はわずかでも被害者様に過失があると主張しました。しかし、加害者側に方向指示器が遅れた可能性を指摘して交渉したところ、過失割合は0:100、過失相殺はしないこととなりました。

示談金合計

こうして交渉はまとまり、示談金合計は1374万1598円となりました。
ご依頼前の保険会社の提示額が719万7529円ですので、1.9倍に増額したことになります。

【増額の内訳】
・治療費 433,000円
・入院雑費 25,300円→34,500円
・交通費 48,200円
・診断書料その他 38,910円
・休業損害 444,600円→1,548,080円
・入通院慰謝料 631,600円→1,450,333円
・後遺障害 6,160,000円→10,691,575円
・過失相殺 -81,081円→0円
・既払い金(治療費等) -503,000円
・提示金額の合計 7,197,529円→13,741,598円

終了報告

最後に、保険会社(加害者側)と交わした示談書の原本を被害者様にご確認いただき、入金確認後、終了となりました。

ご依頼者には、示談金が倍近くになるとは思っていなかったこと、希望どおり早い解決ができたことを喜んでいただき、弁護士としても嬉しく思いました。

どうかお大事になさってください。

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この記事を書いた人
深田茂人
深田法律事務所 代表・交通事故専門弁護士
深田 茂人(ふかだ しげと)
平成17年弁護士登録。平成19年に大分市城崎町に深田法律事務所開設。 これまでに900件以上の交通事故相談、400件以上の依頼を担当しており、特に適正な後遺障害等級の認定が得られるよう注力しています。
【主な職歴・所属】
・大分県弁護士会副会長(平成26~27年度)
・大分県労働委員会会長(令和2年~現在)
・日弁連交通事故相談センター委員
・日本交通法学会会員
・日本賠償科学会会員
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