後遺障害等級が10級から9級に上がり、賠償金が3倍(1258万円→3940万円)になったケース

被害者:42歳、男性、会社員
事故態様:バイクで交差点を直進中に右折車と衝突。
入通院状況:左股関節脱臼骨折・人工股関節置換術、入院525日・通院約1年半

人工股関節の挿入によって後遺障害等級10級が認定されましたが、脚の長さが短くなったこと(下肢短縮)については、人工股関節の挿入に伴うものであるとして、別途後遺障害として評価してもらえませんでした。このような後遺障害等級の認定は正しいのでしょうか?

ご相談内容

交通事故により左股関節脱臼骨折を負い、骨接合手術を受けました。しかし、その後に感染が生じてしまったため、人工股関節を挿入する手術を受けました。この人工股関節の挿入によって「股関節の動きが著しく悪くなった」として後遺障害等級10級が認定されました。ただ、脚の長さが2cm短くなったこと(下肢短縮)については、人工股関節の挿入に伴うものであるとして、別途後遺障害としては評価してもらえませんでした。そして、後遺障害等級10級の賠償金として1258万7898円を支払う旨の提示を受けました。後遺障害等級や金額は適正なのでしょうか?

解決内容

股関節脱臼骨折のCT画像ご相談者様は、脚の長さが2cm短くなった(下肢短縮)けれど、それは人工股関節の挿入に伴う(派生する)ものであるとして、別途後遺障害として評価されていませんでした。

しかし、そもそも、人工股関節には、変形などで生じてしまった左右の脚の長さの違いを整える機能・目的があります(脚長差の補正)。

ですので、下肢短縮(脚長差)が人工股関節に伴う(派生する)評価するのは、人工股関節の機能・目的を無視するに等しいものです。

人工股関節のレントゲン画像

そこで、ご依頼を受けて、当事務所は、人工股関節の挿入によって股関節の動きが著しく悪くなった(10級)だけでなく、脚が2cm短くなった(13級)という2つの後遺障害等級が認められるべきであり、これら10級と13級を併合して9級が認定されるべきであるという異議申立をしました。しかし、後遺障害等級認定機関はこの異議申立を認めませんでした。そのため、当事務所はご依頼者様との協議を経て、裁判をすることになりました。

裁判で、当事務所は、以下のような主張・立証を行いました。

後遺障害等級の評価は、身体の場所(部位)だけではなく、それぞれの場所(部位)における「機能」にも重点が置かれている。例えば、両眼の視力が0.6以下となり(9級)、かつ、片方の眼のピントが合わなくなった(12級)ときは、これら9級と12級を併合して8級が認定されている。

・原告(=ご依頼者様)は、左の股関節について2つの「機能」の障害が生じている。1つは、人工股関節の挿入による脱臼のリスク・肢位制限・体重制限・将来の再置換の必要である。もう1つは、下肢短縮による傾き・不安定さ・不自然な動き・疲れやすさ・見た目(短足)・厚底靴やインソールの必要である。

・後遺障害等級の評価においては、2つの障害が「通常」派生する関係にある場合、1つの後遺障害等級しか認めないとされている。それは、「通常」派生するものならば、1つの後遺障害等級ですでに他方についても評価済みと考えられるからである。したがって、本件でたまたま派生したとしても、「通常」派生するものでなければ、2つの後遺障害等級を認めなければならない。

人工股関節には左右の脚の長さの違いを整える機能・目的があるのだから、人工股関節を挿入することによって下肢短縮が「通常」派生することはない。したがって、人工股関節の挿入によって股関節の動きが著しく悪くなったという後遺障害等級10級と、脚が2cm短くなったという後遺障害等級13級の2つが認められるべきであり、これら10級と13級を併合して9級が認定されるべきである。

・これらの主張を裏付けるために、当事務所は、深田弁護士が医師面談の際に主治医に作成して頂いた意見書2通、医学文献11冊、医療記録等の計61個の証拠を裁判所に提出しました。

そして、当事務所の主張・立証が認められて、裁判所は10級と13級を併合して9級を認定する判決をしました。

その結果、3940万475円の賠償金を得ることができました。当事務所にご依頼前の保険会社の提示額が1258万7898円でしたので、ご依頼によって3.13倍に増額したことになります。

  ご依頼前の保険会社の提示 ご依頼後(判決内容)
金額 1258万7898円 3940万0475円
後遺障害等級 10級 9級

 

確かに、脚の動きが悪くなったことも、脚が短くなったことも、物理的な原因は、左股関節に挿入した人工股関節部分にあります。

後遺障害等級認定機関は10級しか認定していませんでしたが、それは、物理的な原因に引きずられてしまったためと考えられます。

しかし、後遺障害等級の評価は、そのような物理的な見方のみによって行われるべきではなく、被害者の立場、すなわち失われた「機能」を分析して行われるべきものです。

当事務所が、後遺障害等級の評価にあたって採るべき姿勢や原則を裁判所に説得し、裁判所がそれを採用して併合9級を認定したことは、被害者の立場や今後の実務に与える影響を考えると本当に良かったと思います。

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