相談者:45歳 男性(大分県別府市在住)
事故現場:大分市
交通事故の態様:センターラインを越えてきた対向車と正面衝突
ケガの内容:右大腿骨粉砕骨折・右脛骨開放骨折・右中足骨骨折
保険会社が通知した等級と提示額:14級、483万2139円
解決した等級と金額:12級、1662万9654円(3.4倍に増額)
対向車がセンターラインを越え、私の運転する車の正面に衝突してきました。私の車の前方が大きくつぶれ、私の足が挟まってしまい、レスキュー隊に救助されるまで車内から出ることができませんでした。
右の太もも・すね・足を骨折してしまい、手術とリハビリの結果、太ももと足は良くなったのですが、足首周辺の痛みやしびれが残りました。
保険会社からは後遺障害等級14級、示談金の提示額483万2139円の通知が来ましたが、適正なものなのでしょうか?
当事務所の深田茂人弁護士がご相談をお受けしました。
まず、ご相談者様に残っている症状をお聞きしたところ、以下の内容でした。
・右足首付近にチクチクするしびれが常にある。朝起きた時や長時間イスに座った時などにしびれが強くなる。
・右足に体重をのせたり、坂道を上ったり、足の細かい動きをする時に、右足首がヒヤッとする痛みがある。思いがけずに石などの障害物を踏んでしまったりすると、骨まで響くような強い痛みがある。
そして、後遺障害等級14級が認定されるもととなった医師作成の後遺障害診断書を見せて頂いたところ、以下の内容が記載されていました。
・「右足背外側のビリビリ感変わらず(浅腓骨神経領域)。」
・「下腿以下で全体的に色調変化、朝起きた時に足が全体的に血の巡りが悪い感じ。」
・「足関節近位外側腓骨前方でのTinel様sign(+)。」
このような記載内容から、主治医は神経の損傷が後遺症の原因であると考えていることが分かりました。
後遺障害等級14級は、痛みやしびれなどの原因が検査によって証明することまではできなくても、事故態様(患部に加わった外力の大きさ)や症状の経過などから痛みやしびれが残ると考えられるのであれば認定されます。しかし、12級が認定されるためには、痛みやしびれなどの原因が検査によって証明されなければなりません。
そして、神経の損傷を検査によって証明するためには、手術を受けた整形外科ではなく、神経を専門とする神経内科の検査を受ける必要があるため、相談者様にその旨のご説明をいたしました。そして、12級が認定される見込みについて、異議申立と裁判の場合に分けて、詳しく説明しました。
また、14級の場合の適正な賠償金額、12級の場合の適正な賠償金額もご説明しました。
ご相談から数日後、相談者様より深田弁護士に依頼したいとのご連絡を頂きましたので、ご依頼をお受けしました。
ご依頼者様は現在の症状を考えると14級は納得がいかないと仰っていました。深田弁護士も症状や後遺障害診断書の内容などから12級が認定される見込みがあると考え、12級認定を目指すことを方針としました。
まず、深田弁護士は病院の記録を取り寄せ、手術を担当した整形外科の主治医の所見を精査しました。そして、深田弁護士はご依頼者様とともに主治医と面談し、神経が損傷したと考えられる部位・原因などを話し合い、神経内科への紹介状をもらいました。
神経内科では整形外科での状況をご依頼者様と深田弁護士が医師に伝え、様々な検査を受けました。そして、神経伝導速度検査の結果、脛骨神経の伝導速度が秒速33.7mであり、特に足首の通常の刺激部から3cm上の部分では秒速15m(正常値は秒速41.8m)となっていることが判明しました。これは、伝導ブロックといわれる状態でした。
12級認定のための重要な証拠となる神経伝導速度検査の結果が入手できましたので、これにより異議申立をするか裁判をするかが悩ましいところでした。
異議申立は保険会社に対して行うものであり、実際には保険会社の背後にある損害保険料率算出機構という機関が等級を変更するかを決めます。裁判では裁判官が等級を変更するかを決めます。
あくまで深田弁護士の経験に基づく私見ですが、交通事故の後遺症案件を大量に扱っている損害保険料率算出機構は専門性が高く、交通事故以外にも様々な案件を扱っている裁判所は中立性が高いといえます。また、短期間で判断する損害保険料率算出機構に比べると、裁判所は様々な事情や状況証拠をより入念に検討してくれるといえます。
本件の神経伝導速度検査の結果は正常値が秒速41.8mであるのに対して秒速15m(伝導ブロック)でしたので、異議申立でも12級認定の可能性はありました。しかし、医学文献によれば正常値の考え方にも様々なものがあること、個人差もあることなどから、異議申立をした場合にこの検査結果1本で12級が認定されることが「確実」とまでは言い切れないと考えました。また、もし異議申立で12級が認められなければそのこと自体が裁判官に与える影響も否定はできません。
そこで、依頼者様とよく話し合った結果、裁判をすることになりました。
担当裁判官が神経分野や神経伝導速度検査について詳しいとは限らないため、医学文献による解説を加えた上で検査結果を証拠提出しました。
また、伝導ブロックの部位が骨折部位と一致すること、依頼者様の訴える症状が検査結果と整合すること、事故直後の開放骨折の状況、カルテの記載内容なども合わせて詳しく裁判官に説明しました。
そして、賠償金額は、保険会社提示額の483万2139円から判決で認められた1662万9654円に増額しました(別途、治療費等は全て病院に直接支払われました)。
・【股関節の脱臼骨折】人工関節に対する評価を正し、保険会社提示額の1258万円(後遺障害10級)から3940万円(9級)に上がった事例
・【足首の骨折】等級が非該当から12級に上がり、保険会社提示額の100万円から1474万円の14.7倍に増額した事例
・【上腕骨の骨折】ご依頼者の希望で早期解決した事例(638万円から1097万円に増額)
・【肩甲骨の骨折】医師と損保料率機構に骨癒合不全を指摘して、12級から11級に上がった事例
・【背骨の骨折】後遺障害8級が認定され、賠償金が955万円から2909万円に増額した事例
・【背骨の骨折】後遺障害11級が認定され、賠償金2031万円を獲得した事例
・【背骨の骨折】裁判により夫婦で合計4874万円の支払いが得られた事例
・【半月板損傷】医学文献で裁判官を説得し、14級から12級に上がった事例
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