交通事故により頭部に外傷を受けた後、記憶障害や注意力障害、人格変化などの後遺症(高次脳機能障害、こうじのうきのうしょうがい)が生じることがあります。
ケースにもよりますが、話をしたり、動き回ったりすることはできることから、後遺症があることを見落とされることがしばしばあります。
高次脳機能障害のために、記憶力の低下、注意力の低下、自発性の低下、怒りやすい、複数のことを同時に処理できない、周囲の状況に合わせた行動ができない、話が回りくどい、行動を抑制できないなどの後遺症が残った場合の後遺障害等級、賠償金額、後遺障害の立証方法について解説します。
40歳、会社員、年収480万円、
交通事故について被害者の過失なしの場合
等級 | 後遺障害 | 参考賠償金額 |
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 数億円となる可能性があります 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 8796万9600円 =480万円(年収)×1(労働能力喪失率100%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 2800万円 (*別に近親者の慰謝料も支払われる可能性があります) |
入通院慰謝料 | 370万円 (これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります) |
休業損害 | 800万円 |
入院雑費 | 91万2000円 =1500円×608日(20ヶ月) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
将来介護費 | 数千万円~1億円以上となることがあります。 |
その他 | 数千万円以上となることがあります。 装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、将来の雑費、近親者の慰謝料、近親者の付添看護費・自宅付添費、弁護士費用、遅延損害金など |
この内訳は、上記のケース(40歳、年収480万円等)を前提とした場合の一般的な基準による算出結果です。 具体的な事情によっては、金額が大きく異なりうるものです。
なお、後遺障害等級1級(後遺障害別等級表別表第1)の保険金額4,000万円というのは、最低限の補償である自賠責保険による保険金額の上限です。任意保険会社に対しては、この金額を超えた請求が可能です。
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 1億円以上となる可能性があります 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 8796万9600円 =480万円(年収)×1(労働能力喪失率100%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 2370万円 (*別に近親者の慰謝料も支払われる可能性があります) |
入通院慰謝料 | 370万円 (これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります) |
休業損害 | 800万円 |
入院雑費 | 91万2000円 =1500円×608日(20ヶ月) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
将来介護費 | 数千万円以上となることがあります。 |
その他 | 数千万円以上となることがあります。 装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、将来の雑費、近親者の慰謝料、近親者の付添看護費・自宅付添費、弁護士費用、遅延損害金など |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
1億円以上となる可能性があります 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 8796万9600円 =480万円(年収)×1(労働能力喪失率100%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 1990万円 |
入通院慰謝料 | 335万円 (これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります) |
休業損害 | 800万円 |
入院雑費 | 45万6000円 =1500円×304日(10ヶ月) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
将来介護費 | 数千万円以上が認められる可能性もあります(特に、高次脳機能障害の被害者につき、身体介護の必要性が少ない場合でも、見守り、声掛けのための付添・介護の必要性から、将来介護費が認められることがあります)。 |
その他 | 参考保険金額が増額される可能性があります。 装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、将来の雑費、近親者の付添看護費・自宅付添費、弁護士費用、遅延損害金など |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 1億円以上となる可能性があります 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 6949万5984円 =480万円(年収)×0.79(労働能力喪失率79%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 1400万円 |
入通院慰謝料 | 335万円 (これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります) |
休業損害 | 800万円 |
入院雑費 | 45万6000円 =1500円×304日(10ヶ月) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
将来介護費 | 数千万円以上が認められる可能性もあります(特に、高次脳機能障害の被害者につき、身体介護の必要性が少ない場合でも、見守り、声掛けのための付添・介護の必要性から、将来介護費が認められることがあります)。 |
その他 | 参考保険金額が増額される可能性があります。 装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、将来の雑費、近親者の付添看護費・自宅付添費、弁護士費用、遅延損害金など |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 7106万8976円 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 4926万2976円 =480万円(年収)×0.56(労働能力喪失率56%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 1000万円 |
入通院慰謝料 | 335万円 (これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります) |
休業損害 | 800万円 |
入院雑費 | 45万6000円 =1500円×304日(10ヶ月) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
その他 | 参考保険金額が増額される可能性があります。 装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、将来の雑費、近親者の付添看護費、弁護士費用、遅延損害金など |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができない労務が相当な程度に制限されるもの | 4949万5360円 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 3078万9360円 =480万円(年収)×0.35(労働能力喪失率35%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 690万円 |
入通院慰謝料 | 335万円 (これが基準額ですが、生死が危ぶまれる状態が継続したときや、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、より高額になる可能性があります) |
休業損害 | 800万円 |
入院雑費 | 45万6000円 =1500円×304日(10ヶ月) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
その他 | 参考保険金額が増額される可能性があります。 装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、近親者の付添看護費、弁護士費用、遅延損害金など |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 1770万744円 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 1231万5744円 =480万円(年収)×0.14(労働能力喪失率14%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 290万円 |
入通院慰謝料 | 164万円 |
休業損害 | 80万円 |
入院雑費 | 4万5000円 =1500円×30日(1ヶ月) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
その他 | 参考保険金額が増額される可能性があります。 装具等購入費、家屋・自動車等改造費、将来の治療費等、弁護士費用、遅延損害金など |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 721万8480円 解説を見る |
詳しい算出条件 |
後遺障害の逸失利益(後遺症) | 439万8480円 =480万円(年収)×0.05(労働能力喪失率5%)×18.327(67歳までのライプニッツ係数) |
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後遺障害の慰謝料(後遺症) | 110万円 |
入通院慰謝料 | 132万円 |
休業損害 | 40万円 |
入院雑費 | 0円(本ケースでは入院0日なので) |
治療費等 | 実費 (保険会社から直接病院に支払われることが多いです) |
交通費 | 実費 |
その他 | 参考保険金額が増額される可能性があります。 弁護士費用、遅延損害金など |
高次脳機能障害の後遺障害等級を認定してもらうためには、
・高次脳機能障害が生じていること
・それが交通事故によって生じたこと
を立証する必要があります。
高次脳機能障害が生じていることは、交通事故の前と後で被害者の生活状況がどのように変わったかを家族や近親者が記載する「日常生活状況報告書」や、どのような障害が生じているのかの「専門的な検査」によって証明します。
人間の能力には様々なものがあり、いわゆるIQのみでは測れないことは近年周知のとおりです。
そのため「専門的な検査」には多種多様なものがあり、後遺症の内容に応じて複数の検査を受ける必要があります。
高次脳機能障害が交通事故によって生じたことは、MRIなどの画像所見、交通事故直後の意識障害の有無、交通事故の態様などによって証明します。
高次脳機能障害は、頭を打った際、その衝撃により脳全体が強く揺すられて脳内深部の神経が広範囲に切れることによって生じるのですが、その神経が切れている部分はMRIでも写りません。
そのため、神経が切れたことの直接の証拠ではないのですが、MRIにより脳内の出血が写っているなどによりその周辺の神経が切れたと推認できる場合には、そのMRI画像は1つの有力な証拠になります。
また、高次脳機能障害が生じる場合、交通事故直後に意識を失うことが多いことから、そのような意識障害があった場合にはそのことも高次脳機能障害を証明する重要な状況証拠となります。
さらに、交通事故の態様により頭部に強い外傷が加わったという場合、そのことも高次脳機能障害を証明する状況証拠となります。
このように、交通事故により脳内の神経が切れたということをMRIで直接捉えることが現在の技術上困難なことから、MRIなどの画像所見(出血の程度・場所など)、交通事故直後の意識障害の有無・程度、交通事故の態様という状況証拠が総合的に考慮されて、高次脳機能障害の後遺障害等級が判断されることになります。
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