A 交通事故につき被害者の過失割合が大きい場合、治療費が多額になる場合、加害者が任意保険に加入していない場合、加害者が自己の責任はないと主張している場合などは、労災保険を先に使った方がよいと考えられます。
自賠責保険を先に使った場合 | 労災保険を先に使った場合 | |
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治療費 診療報酬点数15万点 |
228万円 6万点×20円 +9万点×12円 詳細はこちら |
180万円 ←15万点×12円 が保険で支払われるので。 詳細はこちら |
入通院慰謝料 入通院の苦痛 による損害の賠償 |
80万円 | 80万円 |
休業損害 治療のため仕事が できなかった損害の賠償 |
120万円とします | 120万円とします |
損害額合計 治療費+ 入通院慰謝料+休業損害 |
428万円 228万円+80万円+120万円 |
200万円 0円+80万円+120万円 |
治療費に対して使う 保険の内容 |
(1)自賠責保険 120万円(6万点×20円) (2)任意保険 0円 (3)労災保険 108万円(9万点×12円) 詳細はこちら |
(1)労災保険 180万円(15万点×12円) 詳細はこちら |
被害者の手元に残る金額 | 147万2000円 加害者の任意保険 休業損害 48万円 + 入院慰謝料 32万円 + 労災保険 休業補償給付43万円2000円+ 休業特別支給金 24万円 詳細はこちら |
216万円 労災保険 休業補償給付72万円 + 労災保険休業特別支給金24万円 + 自賠責保険 120万円 詳細はこちら |
休業損害と 入通院慰謝料について |
▼休業損害の120万円は・・・ (1)加害者の任意保険 48万円 (2)労災保険 67万2000円 ・43万2000円(休業補償給付) ・24万円(休業特別支給金) ▼入通院慰謝料の80万円は・・・ 加害者の任意保険から、32万円 詳細はこちら |
▼休業損害の120万円は・・・ ①労災保険 96万円 ・72万円(休業補償給付) ・24万円(休業特別支給金) ※入通院慰謝料については、労災保険から給付はありません。 ②自賠責保険 120万円 詳細はこちら |
(1)治療費について
まず、治療費ですが、労災保険も健康保険も使わないことになりますので、自由診療扱いとなります。
仮に1点あたり20円とすると、診療報酬点数15万点のうち6万点の治療を受けた時点で、自賠責保険の傷害の保険金額の上限である120万円を使い切ったことになります(6万点×20円=120万円)。自賠責保険は、被害者救済の理念から60%程度の過失では過失相殺しませんので、この120万円全額が自賠責保険から病院に支払われることになります。
次に、残った治療費について、被害者の任意保険に対して請求したいところですが、ここでは、被害者の過失割合による過失相殺を考える必要があります。加害者に請求できる治療費総額は、診療報酬点数15万点×20円×40%(加害者の過失割合)=120万円となります。治療費120万円は、すでに自賠責保険によって支払い済みなので、自賠責保険の上積み保険である任意保険からは、これ以上治療費が支払われることはないということになります。
このように、残った治療については、自賠責保険も任意保険も使えないので、労災保険に切り替えることになります。 労災保険を使うことになりますので、残りの治療(診療報酬点数9万点分)については、1点あたり12円となります。 ですので、9万点×12円=108万円の治療費が労災保険から支払われることになります。
こうして、このケースでは、自賠責保険(1点20円の6万点分である120万円)と労災保険(1点12円の9万点分である108万円)によって、診療報酬点数15万点分の治療費全額が病院に支払われたことになります。
(2)休業損害と入通院慰謝料について
次に、休業損害の120万円についてですが、加害者の任意保険から、加害者の過失割合40%に相当する48万円(=120万円×40%)が、被害者に支払われます。
同じく、入通院慰謝料の80万円についても、加害者の任意保険から、加害者の過失割合40%に相当する32万円(=80万円×40%)が、被害者に支払われます。
休業損害の残り72万円(=120万円-48万円)の60%に相当する43万2000円が労災の休業補償給付から支給されます。 さらに、労災の休業特別支給金が支給されます。この分は、加害者の任意保険から受け取った金額から差し引かれませんので、休業損害総額120万円の20%に相当する24万円(120万円×20%)が支給されます。
以上のように、加害者の任意保険から、休業損害48万円+入通院慰謝料32万円が支払われ、労災保険から、休業補償給付43万2000円+休業特別支給金24万円が支給されます。 よって、被害者の受け取ることができる金額は147万2000円になります。
(1)治療費について
まず、治療費ですが、労災保険を使いますので、1点あたり12円になります。
ですので、診療報酬点数15万点×12円=180万円の治療費が労災保険から支払われることになります。
こうして、このケースでは、労災保険(1点12円の15万点分である180万円)によって、診療報酬点数15万点分の治療費全額が病院に支払われたことになります。
(2)休業損害と入通院慰謝料について
次に、休業損害の120万円についてですが、労災保険を先に使いますので、被害者の過失による過失相殺はしません。なぜなら、労災保険は、被害者側の保険だからです(被害者が勤めている会社が保険料を支払っている)。
まず、休業損害120万円の60%に相当する72万円が労災の休業補償給付から支給されます。
さらに、労災では、20%に相当する休業特別支給金が支給されます。休業損害120万円の20%に相当する24万円が支給されます。
入通院慰謝料については、労災保険から給付はありません。
さきほどの労災の休業特別支給金の24万円については、加害者の自賠責保険から受け取る金額から差し引かれませんので、残りの賠償してほしい金額は、休業損害120万円+慰謝料80万円-労災の休業補償給付72万円=128万円です。 ここまで、治療費も休業損害も、労災保険を先に使って給付を受けたので、自賠責保険の傷害の保険金額の上限である120万円を全く使っていません。
そして、自賠責保険は、被害者救済の理念から60%程度の過失では過失相殺しません。ですので、残る損害額128万円のうち、自賠責保険の傷害の保険金額の上限までの120万円が、自賠責保険から被害者に支払われることになります。
以上のように、労災保険から休業補償給付72万円+休業特別支給金24万円が支給され、自賠責保険から120万円が支払われます。 よって、被害者の受け取ることができる金額は、216万円になります。
よって、このケースでは、自賠責保険よりも労災保険を先に使った方が、被害者は、68万8000円(=216万円-147万2000円)も多く受け取ることができることになります。
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